そらいろちょっきり

生きもの見つけたりとかするよ

小さい甲虫の標本の作り方(展脚の方法)

どうも、ぼこわたりです。

今回は小さい甲虫の標本の作り方を紹介したいと思います。

 (主に展脚のやり方を紹介します。)

 

初めて昆虫標本を作るとき

初めて昆虫標本を作るとして、作り方はどこでどうやって知るのでしょう。

今は便利な世の中で、インターネットで検索すれば

標本の作り方を紹介したサイトが出てきます。

 

しかし多くは蝶やカブトムシ、クワガタといった

メジャーで人気のある昆虫標本の作り方です。

小学生の夏休みの自由研究等で需要があるのでしょう、納得です。

 

僕が今作っているのはゾウムシの標本なのですが、

ゾウムシ専門の標本の作り方なんてさすがに見つかりませんでした。

大まかな流れはカブトムシの標本の作り方と同じなのでしょうが、

やはりカブトムシと比べて小さい分、全く同じとはいきません。

 

ここはどうしたらいいのだろう、ここがどうなってるのかわからない等、

細かい疑問点がいくつか出てきたのです。

恐らく他の人も試行錯誤して色々調べたり、標本の写真などから推測して

自己流でやっているものと思います。

 

僕と同じようにゾウムシを採集して標本を作りたいという

ゾウムシボーイ&ゾウムシガールがもしかしたら今、

インターネットで標本の作り方を調べているかもしれない。

でもゾウムシの標本の作り方がわからなくて挫折してしまうかもしれない。

そんなボーイ&ガールの助けになれればと思い、

今回標本の作り方を紹介しようと思います。

 

 

ただ、あくまで僕の自己流なので正解ではないかもしれません。

他にもっとうまいやり方があるかもしれません。

完全にマネをする必要もなく、こうしたほうが良さそうだと思ったら試してみるのもよいでしょう。

また、ゾウムシに限らず同じくらいの大きさ(数ミリ~10mm程度)の昆虫なら

応用して同じように標本を作れると思いますのでゾウムシ専用の方法というわけでもありません。

前置きが長くなってしましましたが標本の作り方の説明にはいりたいと思います。

 

 

虫の準備をする

当たり前のことですが、標本を作るためには昆虫が必要です。

標本になっていただく虫の命に感謝しましょう。

 

まず虫を殺さないといけません。 

昆虫採集をする人は採集したその場で酢酸エチルで殺して処理する人が多いようですが

僕は生きたまま持って帰ってきています。

 

持って帰ってきた後、ティッシュエタノールを染み込ませたものを

ビンの中に虫と一緒に入れ、ふたを閉めてしばらく置いておきます。

エタノールが蒸発してビンの中に充満すると虫は死にます。

金属光沢のある虫はこの方法だと時間が経っても色が変わったりしにくい気がします。

カツオゾウムシやコフキゾウムシ等の体の表面に粉を噴いているような虫は

エタノールに触れると粉が取れてしまうので、

こういった虫は冷凍庫に入れて殺します。

 

エタノールと一緒にしていた虫は取りだして、濡れている場合は軽く拭き取ります。

冷凍庫に入れていた虫も常温に置いておきます。

 

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これはヒゲナガオトシブミのオスですが、

このように死んですぐは脚が内側に縮こまってしまっており、

死後硬直のような状態なので、脚を広げてもすぐに縮んで元に戻ってしまいます。

なので乾燥して硬くならないように密閉できるタッパー等に入れて

死後硬直が解けるのを待ちましょう。

どれくらいかかるかは虫の種類や大きさによっても変わってくるのですが、

10mmに満たないような小さい虫なら1日から2日くらいで体が柔らかくなると思います。

 

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こういう先端の鋭くなっているピンセットを使って、

オトシブミの脚をつまんで開いていきます。

goot 精密ピンセット TS-14という製品を使用しています。

 

 

 

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こんな感じで開いた脚が戻らなければOKです。

もし戻ってしまうようならさらに半日~1日置いておきましょう。

 

 

 

 

 

作業開始

 

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作業をするときは白バック撮影とかする時に使おうと思って自作した

こんな撮影ブースの中でやってます。

100均で売ってるポリスチレンボードを40cmくらいの大きさに切って、

ホットボンドで接着して箱型にしたものです。

写真撮影の時ように白バックの紙をつけてますが、標本作業時は必要ありません。

 

 

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 ブースの上に熱帯魚飼育用のLEDライトを乗せています。

写真だと暗く見えますが実際はかなり眩しいです。

家族から眩しいからやめろと苦情が来るレベルで眩しいですが、

虫の脚の向きや触角の裏表がはっきりわかるので

明るいところで作業するのをお勧めします。

またフ節がピンと飛んで行ってしまったときも遠くまで行かないし

すぐに見つけられるメリットがありますのでこのブース内での作業はかなり良いです。

 

 

 

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ポリスチレンボードを小さく切ります。

具体的に数字を書くと30mm×40mmくらいの大きさです。

虫の大きさに合わせて、または自分が作業しやすい大きさにすれば良いです。

 

 

 

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切り出した板とオトシブミの大きさ比率はこのくらいです。

ポリスチレンの板には100均で買ってきた両面テープを

虫の体長よりも余裕を持った大きさに切って貼ってあります。

 

 

 

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そしてオトシブミを貼り付けます。

お腹の部分をしっかり両面テープにくっつけています。

体の下に入ってしまった脚は横からピンセットでつまんで引き出しておきます。

上から見て触覚や脚が体の下に隠れてなければ作業がしやすいと思います。

 

 

 

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ピンセットで脚をつまんで位置を調節します。

左右対称になるように意識します。

脚の角度や開き具合に決まりはありませんので、

標本の画像等を参考に自分の好みの形にすれば良いです。

 

 

 

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ポリスチレンを小さく切ります。

10mm×15mmくらいです。

 

 

 

 

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その小さく切った板をカッターで薄くします。

半分くらいの厚みにします。

 

 

 

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両面テープを貼り付けた状態で、

オトシブミの頭の前にくっつけます。

 

 

 

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顎を乗っけて触角を前に伸ばします。

ヒゲナガオトシブミは頭を持ち上げたほうが見栄えがいいのでこうしています。

ゾウムシなんかだと触角は持ち上げずに脚と同じ高さにくっつけることが多いですね。

この辺は虫の種類によって臨機応変に変えていくしかないですね。

 

 

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これはウスアカオトシブミですが、

触角は脚と同じ高さに貼り付けています。

 

 

 

 

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100均のタッパー(ゴムパッキンがついていて密封できる物、200円商品です)に、

タンスなどに入れる衣類用の乾燥剤を入れます。

 

 

 

 

 

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ちょうどいい大きさのコルクボードがあったので乾燥材の上に置きます。

コルクボードの代わりにポリスチレンボードをタッパーの内側と同じ大きさに切ったものでも良いです。

ポリスチレンボードは万能です。標本制作の際にあると何かと便利ですよ。

 

 

 

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そしてその上に展脚後の標本を乗せてフタをします。

この大きさの虫なら常温で2日から3日放置しとけば乾燥終了します。

 

余談ですがこの状態で冷蔵庫に入れたりする場合もあります。

また専用ケースで空気を抜いて真空状態にして冷凍庫で半年くらい乾燥させる場合もあります。

色が変わりやすいナナフシやセミの標本作るときなんかはこれで色を残したります。

ゾウムシなんかでも金属光沢がある種類は乾燥後に色褪せたりすることがありますが、

虫を殺して処理するときの方法と乾燥の方法の組み合わせで退色を避けられることもあります。

 

 

 

標本乾燥後

 

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これまた100均で売っている注射器型のスポイトを使用します。

香水や化粧水を移し替える用途で使うものです。

化粧品関係のコーナーにあります。
これに無水エタノールを入れています。

 

 

 

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乾燥した虫を両面テープから剥がすために、

エタノールを垂らします。

エタノールを含むマニキュア用の除光液でも同じ効果が得られますが、

香料とかが入っているのでなんか甘ったるい匂いがして

標本から匂いが取れなくなったので使うのはやめました。

 

ピンセットで虫の体をつかんでそっとテープから外します。

外した後は虫の脚や触角を壊さないように気を付けて、

エタノールを完全に蒸発させます。

 

 

 

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大きな虫は直接体に昆虫針を刺しますが、

小さい虫の場合は台紙に貼り付けます。

 

 

 

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僕はこちらのメーカーの昆虫針を愛用しています。

チェコ製のもので針の頭が丸くなっているので扱いやすいです。

日本製だと志賀昆虫普及社というところの昆虫針が有名ですが、そちらでも問題ありません。

針の太さも何種類かありますが、これも虫の大きさによって使い分けます。

僕は3号のものを使用しています。

針は必ず昆虫針として売られている専用のステンレスのものを使ってください。

それ以外の針だと経年劣化で錆びてしまったりすることがあります。

昆虫針として売られているものでもステンレスじゃないものは避けた方が無難です。

 

 

 

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こちらもチェコの同じメーカーの三角台紙です。

台紙にも三角と四角の形があり、それぞれに色々な大きさのものが売られています。

これも虫の大きさによって使い分けますが、

普段使っているのは幅5mm×長さ11mmの上の写真のものです。

僕は10mm以下のゾウムシ類はこの大きさで統一しています。

今回は三角の台紙を使用する場合の説明をします。

 

また、台紙は三角でも四角でも自作することもできます。

厚みのある丈夫な紙を任意の大きさ、形に切ればいいのです。

僕は自作するのが面倒なのと、市販のものは角が丸く取れているのが気に入っているので購入したものを使っています。

 

 

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こちらは志賀昆虫普及社製の平均台です。

昆虫針に刺した虫やラベルの高さを揃えるのに使用します。

 

 

 

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最上段の手前側の穴の上で三角台紙に針を刺し、

貫通させて手前の穴の一番底まで針を押し込みます。

 

 

 

 

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常に三角台紙がこの高さに揃えられるって寸法です。

(ちなみに国産の志賀昆虫普及社製の昆虫針は長さが完全に揃っていますが、

外国製の昆虫針はなんかその辺適当で、同じ製品でも長さに数mmの誤差があります。)

 

 

 

 

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虫を台紙に張り付けるための冶具を作ってみました。

まぁそんな大したものではないのですが。

 

 

 

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ポリスチレンボードを重ねて厚みをもたせた板に、

針を入れる穴と、虫を置くへこみをつけてあるものです。

 

 

 

 

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針を差し込む用の穴に針の頭を入れます。

穴の深さはそんなに深くなく、ポリスチレンの板から三角台紙が5mmくらい浮くくらいの深さにしてあります。

 

 

 

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こんな感じで三角台紙が浮くくらいの深さの穴にしています。

 

 

 

 

 

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横のくぼみには虫を置きます。

お腹を上にして矢印の方向に頭が来るようにします。

 

 

 

 

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三角台紙の先っちょに木工用ボンドをちょこっとだけつけます。

 

 

 

 

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こうやって虫のお腹に台紙をくっつけるときの補助用の冶具というわけです。

三角台紙の先端が虫の体の正中線を越えて右側に行かないように

向かって左側に貼り付けます。

こうすることで裏から腹部を観察するときに台紙が貼ってある部分は見えませんが、

昆虫の体は左右対称なので片側が見えれば観察するのに支障がないのです。

 

 

 

 

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ボンドが完全に乾燥して固まる前に虫の位置を微調整します。

台紙に対してまっすぐか、頭とお尻が水平か、

お尻の方から見て虫の体が左右どちらかに傾いていないかをピンセットで調整します。

この時にフ節や触角を壊してしまうことが多いので気を付けてください。

 

 

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ゾウムシの場合

この記事用に写真を撮影した時は手元にゾウムシがおらず

(インセクトフェアやネットオークションで購入した大量の外国産ゾウムシのことは忘れています。)

例としてオトシブミを展脚しましたが、

ちょうどゾウムシを採集できたので、本来いつもやっている

ゾウムシの展脚も紹介したいと思います。

(とは言え、オトシブミの展脚と大まかな流れは変わりません。)

 

 

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今回はシロコブゾウムシを例にしたいと思います。

こちらは冷凍庫で殺して、解凍後1日置いておいたものです。

 

 

 

 

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オトシブミの時と同じようにポリスチレンの板を切り出します。

 

 

 

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こんな窪みを作ります。

ゾウムシの胴体部分と同じくらいの大きさで、

2~3mmの深さです。

 

 

 

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両面テープを貼って、先がいい感じに丸まった棒でぐりぐりします。

大手家電量販店のおもちゃ売り場のプラモデルコーナーに売っていた、

パテ等の成型用のヘラの一種です。

色んな工作をやりますけど色んな場面で活躍してくれるいいヘラです。

 

 

 

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窪みの部分に体が埋まるような感じで貼り付けます。

 

 

 

 

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脚の形を整えて、オトシブミの時同様に

触角は下に薄く切った板を入れて高さを出しておきます。

 

 

 

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体が沈み込んでいる分、脚が体の側面にくるようになっているのが分かりますか?

この大きさのゾウムシなら針刺しにしてもよかったかもしれませんね。

針を刺す場合は最初に刺してしまいます。

乾燥して硬くなってからだと針を刺すときの衝撃で脚が取れたりします。

 

この後はオトシブミと同じように乾燥用タッパーへ。

 

十分に乾燥させた後、ラベルをつけて標本として完成です。

ラベルの作り方も別の記事でいずれ紹介したいと思います。

 

こんな感じで小さいゾウムシ類を展脚しています。

あくまでも一例に過ぎないので、

他の方のやり方なども調べて、それぞれがやりやすい方法を見つけてください。

あなたのゾウムシライフの助けになれれば幸いです。

 

それでは今回はここまで。

次回をお楽しみに!